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生きることって楽しいを見つけることじゃない?

洋画 ライ麦畑の反逆児

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ライ麦畑でつかまえて

タイトルは聞いたことが有ると思います。

JDサリンジャーの有名な小説。

1951年に出版されたこの長編は

青春小説の古典的名作と言われる一方、

表現などが問題視され

学校の図書館などからは

追放されていた時期もあるそうです。

ライ麦畑の反逆児

邦題には一人ぼっちのサリンジャーという

副題がついています。

サリンジャーの半生をなぞると

副題の意味も理解できます。

 

学生時代、大学の教授に言われます。

君が書いたものは

作者の声が物語を邪魔している。

そのことで読者の感情が置き去りにされる。

 

そして、出版社でも

説明が多すぎると言われます。

 

ライ麦畑でつかまえての出版に際して

主人公のイラストを表紙に載せるのを拒み、

解釈は読者にゆだねたいと言った彼。

傲慢だった青年は、

やがて他人の言葉にも

耳を貸すようになったようです。

 

そんな彼がこの映画の副題を知ったら

どう感じたのでしょうか?

 

原題もRebel in Rye(ライ麦畑の反逆児) 

Amazonprime

1時間50分

 

1939年(昭和5年)

第二次世界大戦が始まった年です。

なんとなく時代のイメージが湧きます。

 

生意気な学生時代

大学に戻って創作を学びたい!

挫折してほしくないから

無理なことはあきらめろという父親に

「ジェリーはコロンビア大学に行くの。

あなたは学費を払って!」

そんな母の言葉で

彼は何度目かの大学生に。

 

後に出版されたライ麦畑でつかまえての

最初のページには

母に捧ぐという文字が。

彼を作家へと導いてくれた教授との出会いも

母の一言のおかげかもしれません。

 

皮肉屋の彼の言葉に

教授は皮肉をかぶせて来る。

このやり取りがなかなか面白いです。

 

ラジオのニュースが流れます。

”ドイツ軍のポーランド侵攻が進む中、

アメリカがこの戦争に介入しないことを望む”

望みは、かないませんでした。

2番目に大切な事

在学中から出版社に原稿を送っていた彼に、

教授が言います。

作家になるために2番目に大事なのは

不採用に耐える事。

 

一番大事な物って

いったい何だったんでしょう?

そこが気になる私です。

 

映画の中でその答えは聞けませんでしたが

どんな道を選んでも

挫折との向き合い方が

大事なのかもしれません。

 

なぜ書くのか

文学で成功する夢は

うぬぼれで野心家すぎる青年の只の妄想?

 

商売人として成功している父親は

ユダヤ人であることを隠している。

その父親に対して彼曰く

僕が人生で初めで出会ったインチキ野郎だ!

 

ライ麦畑でつかまえてが出版され

ひとかどの有名人になった彼は

大人として父親と向き合い

決してインチキ野郎ではないことを

実感します。

 

なぜ書きたいのかという問いかけに

色々なものにいら立つからと

若き日のサリンジャーは言います。

書いていると自分の思いがはっきりすると。

 

みかえりが無いとしても書くのか。

サリンジャーと素人ブロガーを

比較するのもおこがましい事ですが

私たちもそう。

書きたい!発信したい!

そんな思いが有るからこそ

みかえりが無くても書き続けるのかもしれません。

ただしプライスレスの大きな見返りは有ります。

 

聞捨てならないセリフ

彼が恋した女性は

後にハリウッドへ行き女優になるのですが

親子ほど年齢差のあるチャップリンと

結婚したという報道を新聞で読みます。

チャップリンもサリンジャーも実在の人物なので

本当のエピソードです。

 

彼女と知り合った当時

彼は言います。

「かわいい事されると男はもう

半分くらい恋しちゃったりするんだ」

 

所詮男子は、

上目遣いにわかんな~い!とか

そんなのがお好きなのね。

ムリ~!

せいぜい騙されときなさい!

そのうち痛い目見るんだから。

反逆児

出版のプロは読者が喜ぶことを知り尽くし

本が売れる方法を熟知している。

 

掲載が決まっても

雑誌のテイストに合わて

部分的な書き直しを要求される。

これは今も昔も変わらない文学界の事実。

 

受け入れれば出版が叶う。

自分の信念を曲げたくない。

大抵はそんな葛藤にさいなまれることになるが

彼はエージェントを通じて

書き直しを拒否る。

 

彼は絶対に自分の意志を曲げない。

そこが彼の反逆児と言われる所以かもしれない。

 

苦悩の時代

真珠湾攻撃をきっかけに

戦争が色濃く影を落とす。

サリンジャーも兵役に。

 

軍隊の飯はまずいが

戦地へ赴く前日にはステーキが・・・・

ステーキが出た。

 

1946年

教授に勧められ執筆を始めた長編小説は

遅々として進まない。

戦争の記憶がよみがえる。

今でいうPTSDだが、

この時代にはあまり問題視されていなかった。

 

メリーゴーラウンドを見つめるシーンは

ライ麦畑でつかまえてのワンシーンと

重ねているかのよう。

 

瞑想の時代

彼は新興宗教に出会いそこに救いを求める。

瞑想によって心が穏やかになる。

 

上手く書けないことを打ち明けると

書くのは才能をひけらかすため?

それとも心の内を表現するため?

そう問いかけられる。

 

毎日書いては破る生活。

だけどある日ふとその手が止まる。

瞑想に救われ執筆生活が始まる。

 

長編小説

ニューヨーカー誌から

契約のオファーが入る。

全ての作品を掲載。

原稿は最初に見せるのが条件。

採用されないものが有れば

他の出版社に回しても良い。

文学界では破格の契約。

 

成功とは裏腹に

戦地で見たむごい体験がフラッシュバックする。

軍隊にいた時代

ノルマンディー上陸の時代

捕虜収容所を解放した時代

精神を病んで病院にいた時代

その間中ずっと書き続け

心の中で温めていた長編小説を書くことは

その時代を思い出すことと重なり

だからこそそれを書くことで

苦しい思いを脱却できると信じて書いた。

 

しかし、初の長編小説は

出版社から酷評を受ける。

それが後にベストセラーとなる

ライ麦畑で捕まえて。

 

孤立

本がベストセラーになり

サリンジャーが有名になると

ファンというよりヤバ目のストーカーが

彼の周りに出没する。

 

ストーカーやマスコミから逃れ

田舎の一軒家に住み、

執筆をつづける。

自分に群がる人たちを遠ざけ

だんだん孤立する生活に身を置く。

 

家の周りに高い塀を巡らし

執筆を始めると何日もこもりっきりになる。

彼は言う。

自分は夫や父親や友になる術を知らない。

なれるのは作家だけ。

 

娘と息子を授かったが

妻とは離婚した。

 

書くことだけに身をささげ

みかえりを求めなければ幸せになれる気がする。

1965年ニューヨーカー誌に掲載された作品を最後に

彼はその筆を折った。

 

執筆しないという申し出を

エージェントは快く受け入れる。

あなたが幸せになれるならそれでいい。

出版が全てではない。

 

ライ麦畑で捕まえては

30の言語に翻訳され出版された。

映画化のオファーを断った理由。

ホールデンを演じられるのは僕だけだ。

だけど年を取りすぎている。

 

ニューハンプシャー州コーニッシュの

森の中で2010年91歳まで隠遁生活をし

出版を拒否し続けたことが

より彼の名声を高めた。

 

真実を見ない

小説家が書いたものが映画化されるのが常。

彼の人生は小説のようでもある。

脚色の部分もあるだろう。

どこまでが忠実に描かれているのかはわからない。

サリンジャーという人物に

興味が湧いたけれど

あえて彼の事を調べることはしない。

真実を知ることより

反逆児であり皮肉屋であり

そして孤独だった作家の人生を

ひとつの物語として受け止めたかったから。

 

教授が彼に言った言葉が刺さります。

自分が読みたくなるような本を思い浮かべろ

自分がブログを書いている時

書いている自分が、

これつまらないって思うことが有ります。

自分が読みたくなるような記事を書きたい。

まだ発展途中で、

実践できている訳ではありません。

自分が読みたくなるような、

他人も読みたくなるような、

心の片隅にその言葉を。

 

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