- 帰れない山
- 僕たちが親しくなるのに時間は要らなかった
- 夏が終わって
- 次の季節に
- 僕らを引き裂いた夏
- 悶々とした日々
- グラッチェ(ありがとう)
- 初めて知ったこと
- 大人になった二人が語る夢
- 父さん!もう一人の息子は・・・
- 言葉が貧しいと
- 夢じゃお腹は膨らまない
- 山の民は山に消える
- 八つの山
- 帰れない山
帰れない山
Amazonprimevideo字幕版で
2024年11月視聴
2時間26分
原題 Le otto montagne(8つの山)
イタリア人作家のベストセラー小説の映画化
大人の青春映画と言われています。
小説では山とそれぞれの思いが
深く書かれているようですが
映画ではピエトロとブルーノの思いが
メインになています。
僕たちが親しくなるのに時間は要らなかった
都会育ちで兄弟のいない僕は
ひとりでいることに慣れていた。
僕の名前はピエトロ。
1984年11歳の夏、休暇でママと
山小屋にやってきて
その村に住む同い年の少年ブルーノと出会った。
村に住んでいるのはたった14人。
彼は村で最後の子供。
僕たちが一緒に過ごすようになるまで
たいして時間はかからなかった。
僕のパパはトリノの工場で
エンジニアとして仕事をしている。
ブルーノのパパは外国に出稼ぎに。
ブルーノがおじさんの家で
牛の世話や搾乳を手伝っている間
僕たちは一緒に過ごし
手伝いが無い時間は
川遊びをして過ごした。
動物のようにじゃれて過ごした。
夏が終わって
僕は元の色白に戻り
擦り傷も消えイラクサのかゆみも忘れ
日常に戻っていく。
グラーナ村での日々は薄れていく。
次の季節に
再び会ったブルーノは
僕をベリオと呼んだ。
ピエトロは石という意味
村の言葉で石はベリオ。
トリノからやってきたパパと二人で
標高3010mの山に登った。
ブルーノとは最近会えていない。
叔父さんと高地放牧に行ってしまったから。
歩いて1時間ほどのその場所へ
パパが連れて行ってくれてブルーノと再会し
3人で氷河に登った。
山小屋で、子供連れの氷河は危険だと
言われたけれど
3人は腰ひもで繋がって
尾根を歩いた。
小さなクレパスをブルーノは
飛び越えたが
僕にはできなかった。
僕は軽い高山病にもかかって
ふらふらだった。
その日の事を僕は忘れない。
僕の両親とブルーノの叔父さん夫婦が
ブルーノをトリノの学校に
通わせることを決めた。
叔父夫婦がそれを受け入れたのは
学費も食費もすべて僕の両親が
面倒を見るから。
僕は思った、あの最低な街(トリノ)より
放牧をして暮らす方が幸せなのにって。
ママは言う、放牧が悪いわけじゃないけれど
勉強していろいろな選択肢を持つべきだって。
ブルーノはこの村を出たい様子だった。
僕らを引き裂いた夏
ある朝、ブルーノのおばさんが訪れ
彼が父親と一緒に出稼ぎに行ったこと
トリノには行かないこと
秋まで帰らないことを知った。
僕の両親はブルーノの賢さを知り
援助したいと思っての提案だったが
結局それが僕たちを引き裂いた。
今年の夏も僕はこの村で過ごしているけれど
僕が退屈な夏を過ごす間
ブルーノは建築現場に働きに行っていた。
彼は13歳で大人になったが
僕は相変わらず・・・・
彼はきっと青春も知らない。
若者になった僕らは
偶然街のカフェで出会った。
だけど軽く視線を送っただけで
何の会話も無かった。
聞きたいことはたくさん有ったのに。
親父は僕を山登りに誘った。
僕は山になんか行きたくなかった。
親父と一緒に行きたくなかった。
翌年は数日だけ山で過ごし
その後、僕はもう山に行くことは無かった。
ブルーノとは15年会うことは無かった。
悶々とした日々
親父にはこっぴどく言われた。
入った大学ぐらいちゃんと卒業しろと。
僕は親父みたいな人生を送りたくない。
その言葉は撤回しなかった。
親父が亡くなった。
ある日僕はひとりであの村に行った。
そこで出会ったのは
僕と同じように髭を蓄えた
ブルーノだった。
ブルーノのバイクの後ろに乗り
僕らは山を目指した。
ブルーノは親父と約束していた。
この山に家を建てることを。
親父が決めたまさにこの場所に。
資金は要らない。材料費が有ればいい。
必要なのは人手だ。
僕は断ったよ。不器用だから。
グラッチェ(ありがとう)
雪が解けたら取り掛かろう。
俺が教えるから。
僕は心の中でつぶやいた。
グラッチェ。
親父が亡くなったのは62歳。
僕は31歳だった。
僕が生まれたのと同じ年なのに
僕は結婚もしていないし子供もいない。
そして、定職も無かった。
親父は働きづめで
夏の数日だけをこの山で過ごした。
あの夏から僕は遠ざかっていたけれど
親父はブルーノと何度か山に登っていた。
初めて知ったこと
ブルーノは父親と喧嘩し
僕の親父にいろいろ相談していた。
そして僕がどうしているのかも
いつも気にしていた。
親父に山へ誘われた時
僕は友達と行けばいいのにって言った。
友達なんかいないだろうとも言った。
親父はブルーノと山に登っていた。
この10年親父とは話していない。
ブルーノも父親の干渉がうるさくて
殴ってしまい、それ以来疎遠だった。
大人になった二人が語る夢
ブルーノは
叔父の牧場を再建したい。
金の為なら職人を続ける方がいいけれど、
先祖代々山で家畜と暮らして来たから。
親父は別の道に行き
叔父もすべてを台無しにしたけれど
俺は山の民だから。
僕は今まで
いろいろな仕事に着いたけれど
僕にとってのすべては
焚火、魚、山々、お前(ブルーノ)
父さん!もう一人の息子は・・・
僕は時々親父と話したくなる。
父さん、もう一人の息子(ブルーノ)は
自分の道を見つけたよ!
僕は自分に嫌気がさしていた。
新しいピエトロになるために
旅に出ようと思う。
インドに行った。
ネパールに行った。
山に登った。
ヒマラヤに登った。
父さんがやっていたように、
地図に歩いたルートを書き込んだ。
ブルーノ、ここで暮らす人たちは
みんな山の民だよ。
僕は本を出版した。
ひとつの夢がかなった。
言葉が貧しいと
物事にはいくつもの表現が有る。
言葉が貧しいと思考も貧しくなる。
お前は自分の言葉を見つけた。
ブルーノからの賞賛の言葉だった。
出版社が付いたことで
金持ちにはなれないけれど
ネパールならしばらく暮らせる。
全く予測していなかった形で
自分の居場所が見つかった。
夢じゃお腹は膨らまない
ブルーノはトリノからやって来た、
ピエトロの友人ラーラと一緒になり
牛の世話やチーズを作って
生計を立てていたけれど
生活は苦しく夫婦仲も険悪になった。
僕は自分が仕事を手伝うことで
少しでも協力できればと思ったけれど
ブルーノが声を荒げてNO!と言ったのは
迷惑をかけたくなかったからか
プライドがそうさせたのか。
僕は再びネパールに行った。
ふたりは頻繁に連絡することは無かった。
ブルーノは牧場を差し押さえられ
ラーラは子供を連れて実家に帰った。
ブルーノは言葉が貧しいと
思考も貧しくなると言ったが
生活が貧しくなることで
ブルーノの思考も貧しい方へ傾いて行った。
山の民である自分は
山小屋で暮らし、
小規模で牛を飼って生活すればよかった。
実業家には向いていない。
山の民は山に消える
親父の願いで建てた山小屋は
僕とブルーノの物だった。
行き場所の無いブルーノは
その山小屋で暮らしたいと言い
勿論二人の山小屋だからと
僕はそう言った。
ちょっとした行き違いから
ブルーノに追い出されたけれど
再び訪れた時には
お互いを受け入れることができた。
僕が旅の途中で見た、
鳥葬の話をした時
ラーラたちは嫌がったけれど
ブルーノは、そんな風に
この世から消えるのが理想だ言った。
八つの山
この映画のタイトルでもある八つの山。
ピエトロがネパールで
老人から聞いた話に由来する。
世界の中心には
須弥山(スメール山、しゅみせん)という、
ものすごく高い山がそびえている。
それを囲むように、
八つの山と八つの海がある。
八つの山をめぐる者と、
須弥山の頂上を極める者と、
どちらがより多くを学ぶのだろうか。
居場所を模索するピエトロは
自分は八つの山をめぐる者だと思っている。
山の民として生きる道を選んだブルーノは
頂上を極めた者。
帰れない山
ラストのピエトロの独白、
「人生には決して帰れない山がある、
世界の中心の一番高い山で
友を亡くした者は、
永遠に八つの山を彷徨うことになるのだ」
邦題は彼のこの言葉に由来している。
2時間を超える映画は長いです。
出来事を折れ線グラフにしたら
ふり幅はとても小さいです。
青春は年齢じゃない。
坂道を登っているうちは
いつだって青春だと思う。
何かにたどり着くまで、
その何かが見つかるまでは
ずっと青春は続いている。